映画鑑賞録。

最近見た映画を忘れないために。

暗黒女子。

2017年。

 

評価-7/10。

 

 

サスペンス度-☆☆☆☆

中盤までミステリー度-☆☆☆☆

最終的にはホラー度ー☆☆☆☆

青春の甘酸っぱさ度ー☆☆☆

 

 

舞台はキリスト教系の女子高。女生徒の憧れの的であるヒロインの転落死から始まる。

 

ヒロインは学園の経営者の娘で、美しく聡明という、フルスペックな女の子。彼女が主催する文学サークルは特権的な位置づけにある。

 

文学サークルは、ヒロインとヒロインの親友の他に、4人の生徒と男性顧問がいる。ヒロインの親友が、3人の生徒にヒロインの死をテーマにした話を作らせて、それを読ませる「闇鍋パーティ」を開く。

 

ここで、4人の生徒それぞれがヒロインとその死に関与したであろう人を語り出す。

 

一人目のAはDを疑い、二人目のBはAを疑い、三人目のCはBを疑い、4人目のDがCを疑う。(原作では5人。)

 

それぞれがそれぞれの視点を持ち、1つの現実に複数の「ストーリー」があるという形は、芥川龍之介の『藪の中』を彷彿とさせる。個人的に好きな設定だ。

 

原作では5人なのを、4人にしたのは映画として間延びさせないためだと思われる。

 

4人はそれぞれほかの生徒一人の暗部を描き出すが、4人ともヒロインが善意の人間であることを主張する。

 

→まぁ、こういう設定の場合、「ヒロインは実は…」というパターンなのは王道で、この作品もそれに倣っている。

 

4人が語る「ヒロインの悲劇」はバラバラなので、誰か一人がウソをついているとしたら矛盾してしまうので、誰か一人は正しく3人がウソをついているか、4人全員がウソをついているか、または、ヒロインがウソをついている、ということになる。

 

 

4人のストーリーが終わると、ヒロインが転落死する前に書かれたストーリーが親友の口から語られる。

 

 

 

そのストーリーに打ちのめされる4人に対して、親友は自身のストーリーを語り、最終的にスプラッター映画になってエンディングなわけだが、ここはもう少しひねりや盛り上がりがあってもよかったような。。。

 

(結果が予想できる時間が長かったので、ドドーンと結果を見せられても、まぁそうでしょうねという感想しかない、みたいな。)

 

 

 

高校生の純粋さと邪悪さをうまく描いている映画で、なかなか面白かった。

 

ヒロインも邪悪といえば邪悪だけど、純粋な恋愛もしてるし。4人の生徒も弱いところや自分勝手なところもあるけど、懸命なところは純粋だ。

 

 

この映画のヒロインは、その純粋性や美しさが高校生特有のものとして感じているけど、結局人間すべてがそういうものだとも思う。

 

茶番劇だと思いつつ、それを演じ続けなければならない状況を作りだすのも、高校生特有というよりも、高校生のころから始まっているということなんだろうなー。

 

 

 

女子高というモノセックスの設定というだけで、密室性があって、サスペンス度が増しますね。

 

男性顧問が意外に重要な役だったのが、驚いた。てっきり、チョイ役かと。

 

 

 

 

学園モノだと、主要メンバーが若手ということで、演技力が甚だ不安だったけど、ヒロイン役の人(飯豊まりえ)が18歳くらい、ヒロインの親友役(清水富美加)が23歳くらいで、演技はちゃんとしていて良かった。4人の生徒役の人たちも、ちゃんと演技していたので、「脳内変換」しながら見続ける必要がなくて、ストレスなく見れた。

 

 

 

 

 

ちょっとネタバレ。

 

 

初めにストーリーを話し出すAが、文学サークルで始めた食べたお菓子に口が合わず吐いてしまったというのを聞いて、「あ、コレ、毒が入っているの知ってて、ヒロインがわざと食べさせたんだ」と思ったし、「善良なるヒロインは実はイジメの中心人物というパターンか」とも思ってた。

 

さらに、

 

ヒロインの妊娠を告げ口したのは、てっきりヒロインの親友が主導していると思いながら見ていたけど、違った。

 

 

(4人が語る)ヒロインが4人の生徒それぞれに被害を受けていると思わせたのは、ヒロインが4人を騙していて、自分を中心に4人がいがみ合うのを画策しているのか(最終的にはヒロインのために殺人を犯してもらう)と思ってたけど、違った。

 

だから、ヒロインが転落死したのは、ヒロインの親友が「美しいヒロイン」を守るために、「邪悪なヒロイン」を殺したのだーと推理していたのだけど、まったく外れていたさー。←みんなから愛されていて、ウソをつかず人を騙さず、慈悲を振りまいていると思われたままでいるために。悪いことを考えていると他の人に知られる前に死んでしまえば、思い出の中で美しいままでいられるから。

 

 

 

親友は、「世界の中心」であるヒロインに恋い焦がれていて、同化したいほど憧れていて、だから男性顧問と世界(=学園)の外で「平凡な女性」として生きていくと決心したヒロインを、「世界の中心」でなくなった、裏切られたと思った。

そして、自分がヒロインになって「世界の中心」を取り戻す、という話だった。

 

 

 

そういえば、相手にシンパシーを感じて、恋い焦がれて、意識的であれ無意識的であれ同化したくなるという話はよくあるけど、たいていは同性同士で、主従関係があって、最終的に下剋上状態になる展開が多いような。。。そして、だいたい悲劇的だよね。

 

 

 

同化したくなって、相手に同化してしまったら、本来の人格はどこに行ってしまうのだろうね。

そういえば、ヒロインの親友も、4人の生徒の話の中にほとんど登場しなかったし、どんな家庭環境でどういう性格なのかも不透明(むしろ空気のように透明だったというべきか)だったなー。

 

原作読んでないので、原作も読んでみたくなったな。