映画鑑賞録。

最近見た映画を忘れないために。

三度目の殺人。

2017年9月9日公開。映画館にて。

 

評価-7/10。

 

 

真実度-☆

木は見れるけど森は見えない度-☆☆☆☆

切なさ度-☆☆☆

いい演技見れた度-☆☆☆☆

 

 

犯人が被害者を撲殺するシーンから始まる。この殺人事件を中心にして、ストーリーが進められていく。つまり、犯人はなぜ殺人を犯したのか、という観客に向けての謎があり、映画の中では犯人の動機をめぐって判決を軽くしようと動く弁護士と犯人、そして被害者家族の関係が描かれている。

 

犯人は、過去にも殺人を犯しているので、これが二度目の殺人になる。

 

弁護士は途中から弁護に参加することになり、判決を軽くしようと画策する。

 

犯人は、供述を二転三転させ、事件の動機をあやふやにさせようとしている。

 

弁護士は事件の動機の真実性に興味がなかったが、犯人と接見するうちに真実を追い求めるようになり、そのため、もがくことになる。

 

 

最終的に謎が明らかにされることもなく、「正義」が「悪」を倒すこともないので、カタルシスを感じることはありません。

 

さらに、ひとつひとつの事柄が分かりやすく説明されるということもないので、もやもや感が増していきます。

 

私は、「藪の中」状態が好物なので、とても面白かったですが、「はっきりとした爽快感」を求めている人には不向きな映画でした。

 

 

少し前にテレビで二時間サスペンスを見ていたら、ヒロイン役の人の演技が何ともいえなくて絶望的な気持ちになってチャンネルを変えざるを得なかったので(佇まいはキレイな人で、何もしゃべらなければ雰囲気は良かった)、役者がしっかりしている映画が見れて満足。

 

 

さらに、映像や演出もよかった。(ちょっと過剰だなと思ったところもあったけど)

役者の目の演技だけに頼らずに、手の演技もクローズアップしているのも好みだった。

 

 

役所広司の演技は圧巻だった。不気味な殺人犯を演じていて、ムカつくし、怖いし、可哀そうだし、寂しそうだし、応援しちゃいそうだし、それでも「全然わからない奴」だったし。

 

広瀬すずは、被害者の娘で、透明感があった。設定的にとんでもなくかわいそうな存在だけど「何もできない無力さ」はなく、従順性がある一方で芯のあるキャラをうまく演じていた。

 

虚言癖があるかもしれないという設定も、もっとうまく絡ませていたら、さらに「藪の中」感が増したのに、と思った。(客のもやもや感も増やしてしまうが。)

 

 

斉藤由貴もいい演技をしていた。被害者の妻で、ズルい母親を、ゾッとするような演技を、適度なバランスで演じていた。

 

 

弁護士役の福山雅治は、映画の中で唯一「変化していく人」を演じるので、難しい役どころだけど、しっかり演じてた。

 

 

 

 

 

 

犯人は、逮捕される前に、飼っていた鳥を殺して埋めるのだけど、1匹だけわざと逃がしたという。

接見時には「餌も食べることもできずに、いずれ死んでいくだろう」と冷たく言い放つが、勾留部屋で鳥の鳴き声が聞こえてきた時には明るい顔で迎え入れようとしている。

 

逃がした鳥が彼にとって何モノだったのか。善なのか悪なのか、真実なのかウソなのか。。。

パンドラの箱は開けて希望だけ残ったが、彼は自分の鳥かごを開けて希望だけを空に放ったのかもしれないなぁ。。。

 

 

 

 

 

 

 

ネタバレになりますが、

 

 

 

被害者の娘は父親から性的虐待を受けており、母親は知りつつそのままにしていた。

娘は犯人にそのことを伝えており、そのため、犯人が父親を殺したのは自分のためだと思っている。

 

 

強盗殺人ではなく、「それ相当の理由のある殺人」の方が刑が軽くなるので、娘は自身の性的虐待を公にする覚悟を持った。

 

 

犯人は犯行の否定することとなり、犯行の動機なしということを主張するために、娘の告発は邪魔になるということで、弁護側の方から娘を黙らせた。

 

 

三度目の殺人」というのは、そのまま受け取れば、犯人が犯人自身を殺した、ということになるんだろうけど。

 

 

裁判の中で娘を黙らせたことによって、「愛する父親を殺された娘」となり、「父親から虐待されていた娘」はいなかったことにされた。

 

これこそが「三度目の殺人」に感じてしまうよね。。。

 

 

「真実」が殺され「安寧」を与えられた娘は、これからどうなるんだろうね。。。